漢方薬・生薬

こむらがえりに即効!枕元に置いておきたい芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

急に足がつって、どうしようもなく痛い思いをした経験はありませんか?

一度つってしまうと、何度も繰り返す、ということもあります。

痛くて動けなくて、何もできないあの辛い時間、実は漢方薬で楽になるのです。

ここでは、そんな時に即効性のある芍薬甘草湯について、ご紹介します。

芍薬甘草湯とは?


芍薬甘草湯は、中国「漢」の時代の『傷寒論』という古典に載っている処方です。

芍薬と甘草の二種類の生薬で構成されたシンプルな処方で、今でもよく使われています。

それでは、芍薬甘草湯について具体的にみていきましょう。

効能効果

芍薬甘草湯の主な効能効果は、以下のとおりです。

  • 急激におこる筋肉のけいれんを伴う痛み、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛

漢方の代表的な痛み止めで、ほかに腰痛・神経痛・生理痛・胃痛にも効果を発揮します。

また、痛みだけではなく、内臓や血管などの平滑筋や手足の骨格筋などのけいれんにも効果が期待できます。

ふくらはぎのことを「こむら」といいますが、芍薬甘草湯がこむらがえりに効くというのは、よく知られているところです。

漢方薬としては即効性があり、服用してから効果が現れるまで数分という即効性が報告されています。

生薬

芍薬甘草湯の構成生薬はシンプルなものですが、古来の処方と現代の医療用のエキス製剤とでは、少々違いがあります。

芍薬は、美しく華やかで観賞用としても人気が高い花です。

根を丸ごと乾燥させたものを「赤芍薬」といい、血の流れを良くする作用のある生薬として用います。

一方で、根の外皮を取り除いて乾燥したものを「白芍薬」といい、痛みの緩和作用がある生薬です。

芍薬甘草湯のもう一つの構成生薬である「甘草」は、最も利用されている生薬でもあります。

さまざまな薬効がありますが、腹痛や手足のけいれん痛を緩和して痛みを鎮める働きがあります。

医師が処方するエキス製剤に使われている甘草は、「生甘草」です。

生甘草は、甘草の根を水洗いしてそのまま日干しした生薬で、清熱解毒の作用があります。

これに対して、加熱加工したものを「炙甘草」といい、こちらに止痛効果があるとされているのです。

古来の処方構成では、芍薬甘草湯は同量の白芍薬と炙甘草のふたつの生薬で成り立っています。

中医学的に見てみると、生薬の加工方法で区別がされていますが、芍薬甘草湯が筋肉のけいれんや痛みに効くということは、現代医学でも臨床報告があります。

副作用や使用上の注意点

芍薬甘草湯は、体力や年齢にかかわらず使用することができます。

日本の古い医学書でも、痛みを伴うけいれんで子供が夜泣きしている時に効果が期待できるというような記載もあります。

しかし、全く副作用がないということではありませんので、次に当てはまる方は必ず医師または薬剤師に相談してください。

  • 前にお薬を使用した時に、かゆみや発疹などのアレルギー症状が出たことがある
  • 妊娠または授乳中
  • ほかに薬などを使っている(甘草を含むほかの漢方薬など)

甘草には、偽アルドステロン症(むくみ・高血圧・低カリウム血症等)を引き起こす恐れのある「グリチルリチン」という成分が含まれています。

甘草はほかの漢方薬に入っていることが多い生薬ですので、7.5gという1日の摂取上限を超えないように注意する必要があります。

また、市販薬を購入する際には、薬剤師または医薬品登録販売者に相談しましょう。

ほかのお薬にも含まれる芍薬甘草湯

芍薬甘草湯は、とても発展処方の多い漢方薬です。

芍薬と甘草のみという、シンプルな処方ながらも、その痛み止めの効果に定評があることから、発展処方が多いのも納得がいきますね。

どのような漢方薬があるか、詳しくみていきましょう。

派生する漢方薬

芍薬甘草湯に、桂枝・生姜・大棗が加わったものが「桂枝湯(ケイシトウ)」です。

桂枝湯は、体力がない人向けで、体の熱や痛みを軽い発汗効果によって発散させる作用があります。

この桂枝湯が、さらに発展して「桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)」や「桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)」となります。

ほかにも、芍薬甘草湯に柴胡・枳実を加えたものが「四逆散(シギャクサン)」という、鬱々とした気分を鎮める漢方薬です。

ここで紹介していないものや、さらにほかの生薬を加えて発展させた処方など、相乗効果を期待してさまざまな漢方薬に配合されているのです。

市販薬や医師による併用処方

「こむらがえりにはこのお薬」と謳っている市販の薬も多くあります。

しかし、そのほとんどが芍薬甘草湯で、商品名をカタカナでわかりやすくネーミングしたものです。

また、「安中散(アンチュウサン)」という胃腸薬に、さらに芍薬甘草湯をプラスした処方の胃腸薬は、痛みにも胃もたれにも適応するので、常備しておくのも良いでしょう。

芍薬甘草湯を西洋薬と併用することで、これまでには見られなかった改善効果があったという、全身のけいれんを伴う破傷風の治療についての臨床報告もあります。

芍薬甘草湯についてのまとめ

こむらがえりが起こる理由は、足の酷使や筋肉の疲労など、さまざまな理由があります。

寝ているときによく起こるといった場合には、芍薬甘草湯を枕元に置くと安心です。

また、ゴルフなどの足腰を使うスポーツをするときにポケットに忍ばせておくなどして、常備するのもおすすめです。

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記事執筆・監修

国際中医薬膳師/調理師(ハラール認証)/医薬品登録販売者/フードコーディネーター2級/マスターオーガニックコーディネーター/オーガニックコスメマイスター/加工食品診断士

當房 清香

医薬品登録販売者としてOTC薬(市販薬)を販売する業務に就く傍ら、健康や薬に関する記事ライターとして活動。
調理師やフードコーディネーターの資格を保有し、更にはオーガニック・薬膳・食品添加物に関する資格も持っており、料理研究家。
「自分の未来は、現在カラダに取り入れているものでつくられていく」
ことを幅広い視点でお伝えしている。
元裁判所書記官であるが、妊娠・出産を機に転身し現在に至る。

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