立効散とはどんな漢方薬?気になる効果効能・副作用について
天然の生薬から作られている漢方薬は、「いわゆる西洋薬ほど効果がない」、「経験的に使われており、医学的な根拠が少ない」と考える人もいるようです。
ですが、実際の現場ではそんなイメージとは裏腹に、漢方薬を構成している生薬から有効成分を取り出して、新しい薬を開発することがあるように、漢方薬も西洋薬に劣らない十分な効果を発揮する薬です。
今回取り上げる漢方薬、立効散も同じです。
このページでは、立効散の効果効能や副作用、そして安全に立効散を使うための注意点などについて解説します。
立効散とは?
立効散は、「リッコウサン」と読む漢方薬です。
立効散は、実は衆方規短という室町時代の古典的医学書にも載っている歴史のある漢方薬です。
漢方薬は、製品番号が付けられていますが、立効散のそれは110番です。
歯の痛みや、抜歯後の痛み止めとして使われる漢方薬です。
立効散の性状
立効散は、1包あたり2.5[g]の顆粒状の漢方薬です。
淡い灰褐色で、独特なにおいがします。
なお、立効散は天然生薬から作られていますので、製品ごとに色が少し異なることがありますが、効果効能には影響ありません。
味は、渋くて辛いです。
立効散の生薬
立効散は、『防風(ボウフウ)』『細辛(サイシン)』『升麻(ショウマ)』『竜胆(リュウタン)』『甘草(カンゾウ)』の5種類の生薬で作られています。
生薬 | 立効散2.5[g]中の組成 |
---|---|
防風(ボウフウ) | 0.67[g] |
細辛(サイシン) | 0.67[g] |
升麻(ショウマ) | 0.67[g] |
竜胆(リュウタン) | 0.5[g] |
甘草(カンゾウ) | 0.3[g] |
『防風(ボウフウ)』
:炎症反応を抑えたり、痛みを楽にしたりする効果。
『細辛(サイシン)』
:痛みを抑えたり、熱を下げたりする効果
気分を落ち着かせる効果
アレルギー反応を抑える効果
局所麻酔作用
『升麻(ショウマ)』
:炎症反応を抑える効果
痛みや熱を下げる効果
『竜胆(リュウタン)』
:アレルギー反応を起こしにくくする効果
『甘草(カンゾウ)』
:炎症反応を抑える効果
痛みを抑える効果
アレルギー反応を抑える効果
咳止め効果
胃炎を予防する効果
このほか、ステアリン酸マグネシウムや乳糖水和物、アメ粉などが添加物として配合されています。
立効散の証
西洋医学になく、漢方医学にある概念に『証』があります。
『証』は、どのような漢方薬が適しているかを判定するために大切なことなので、漢方医学での診断法といっていいでしょう。
その『証』は、漢方医が経験に基づいて、患者さんの症状に加え体質も考慮して判断します。
代表的な『証』に、『虚実』と『陰陽』があります。
『虚実』は、生命力、体力の充実度合いを示す概念で、『実( ジツ)』は生命力が充実した体質、『虚(キョ)』は虚弱な体質を意味します。
『陰陽』は、身体に異常が生じたときに、冷え性になるのか、ほてりやすいかという体質の違いを意味しています。
体がほてる状態が『陽』、反対に寒気がするなど冷え性を起こしやすい状態を『陰』としています。
そして、『虚実』『陰陽』どちらにも、中間というどちらもとも言い難い状態があります。
立効散の『証』は、『中間』ですので、証をさほど気にすることなく使える漢方薬といえます。
立効散の効果・効能および副作用
立効散は、むし歯などの歯の痛み、もしくは抜歯した後の痛み止めに効果があります。
グラグラした歯や、むし歯でほとんどなくなったような歯の抜歯後の痛み止めとしては効果が期待されますが、歯の根がしっかりしている歯の抜歯や親知らずの抜歯の後の痛み止めとしては、十分な効果は得られないかもしれません。
また、象牙質知覚過敏症とよばれる、むし歯でもないのに歯が冷たいものにしみる症状に対しても、立効散が効果があるという報告もあります。
副作用としては現れやすいのが、『胃の不快感』『食欲不振』『軽い吐き気』といった消化器系の症状です。
このように立効散には重めの副作用はあまり起こらないのですが、ごく稀に重い副作用が起こることがあります。
それが『偽アルドステロン症』『ミオパチー』という症状です。
偽アルドステロン症は、立効散の甘草をたくさん飲みすぎることによって起こる病気です。
ミオパチーとは、筋肉の働きに異常が生じる病気です。
こうした症状が現れた場合、服用を中止して、すぐに医師の診察を受けるようにしてください。
症状 | 副作用として疑われる病気 |
---|---|
おしっこが出にくくなる 顔や手足がむくむ まぶたを重たく感じる 手がこわばる | 偽アルドステロン症 |
身体全体がだるくなる 手足の力が入らない 手足がふるえる 手足がしびれる |
ミオパチー |
立効散の飲み方
立効散を飲むタイミングは、食前、もしくは食間(食後2〜3時間後のこと)です。
このように漢方薬では、食後ではなく食前や食間に服用することが多いので、飲む時間を間違えないようにしましょう。
服用するときは、水かぬるめのお湯で、口に含んでゆっくりと飲むようにしてください。
立効散の使用上の注意点
立効散を服用する上で、副作用を防ぐためにも守らなければならない注意点がいくつかあります。
飲み忘れた場合
立効散は1日3回服用する漢方薬ですが、毎日服用しているつもりでも、ついつい忘れてしまうこともあるでしょう。
飲み忘れた時は、ハッと思い出した時にすぐに飲んでいただければ大丈夫です。
ただし、次回の服用時が2時間以内に迫っている時は、服用しないでください。
中には飲み忘れたからといって、2回分を1度に飲もうとする人もいるようですが、この服用方法はダメですので、注意してください。
立効散を服用する前に相談したほうがいい場合
以下に記載した項目に当てはまるような場合は、使用する前に医師や薬剤師と相談するようにしましょう。
- 以前に立効散を含む何らかの薬を服用したら、かゆみやじんましんなどの何らかのアレルギー症状が現れたことがある人
- 妊娠中、もしくは授乳中の女性
- 漢方薬だけでなく、病気の治療で医師から処方された薬を使っている人
- 65歳以上の高齢者
注意すべき飲み合わせ
既述したように、立効散には甘草が含まれています。
芍薬甘草湯などの甘草が含まれている他の漢方薬、グリチルリチン製剤をすでに飲んでいる方は、偽アルドステロン症という副作用が起こるリスクがあるので、医師や薬剤師と相談してください。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、立効散の効果効能・副作用について紹介してきました。
立効散は、抜歯後に生じる痛みや、むし歯などの歯の痛みなどに効果のある漢方薬です。
証は中間となっており、誰でも使いやすいのが特徴です。
もし、歯の痛みで辛い思いをしているなら、歯科医院で診てもらうまでの間、立効散を使ってみてはいかがでしょうか。