肩こりに漢方薬は効く?適した漢方とその効能を解説
肩こりの治療は、生活習慣の改善が最も重要とされています。
具体的には、姿勢を正しくすることや不規則な生活習慣を改めることなどです。
これに加えて、マッサージ・ストレッチ・体操なども良いとされていますが、漢方薬も非常に効果的です。
どうして漢方薬が肩こりに効くのでしょうか。
肩こりとは?
肩こりとは、首筋から僧帽筋という背中の上部の広範囲に広がる筋肉にかけて生じるこわばった感じや不快感、重苦しさや痛みなどの症状を認める病気のことで、医学的には『肩関節周囲炎』とよばれています。
ですから”肩”こりと言いますが、実は首や背中なども含む広い範囲に及ぶ病気なのです。
肩こりの原因
肩こりの原因は、大きく分けると『病気によるもの』と『そうでないもの』に分けられます。
肩こりの原因となる病気としては、ヘルニアやねんざ、リウマチ、変形性頚椎症が挙げられます。
これらは首や骨の病気なので原因としては理解しやすいですが、そのほか高血圧症、狭心症、うつ、眼精疲労も原因となります。
病気以外の原因としては、猫背やパソコン操作などによる姿勢の悪さ、エアコンによる冷えすぎ、運動不足、なで肩、精神的ストレスがあり、特に姿勢の悪さは、肩こりの原因の筆頭に挙げられるほど大きな影響を与えています。
肩こりの治療で、姿勢や生活習慣の改善が重要なのは、このためです。
肩こりに漢方薬が効く理由
前述しましたように、肩こりには、姿勢の悪さが大きく関与しています。
では、漢方薬がどうして肩こりに効果を発揮するのでしょうか。
漢方では、血液や気のめぐりが悪くなることが、病気を引き起こす原因であると考えられています。
血液の流れの悪化を『瘀血(オケツ)』といい、気のめぐりの悪化を『気鬱(キウツ)』といいます。
肩こりも、瘀血や気鬱によって生じる病気とされています。
肩こりで漢方薬を処方するときに、肩こりの症状だけではなく、手足のほてりや冷え性、肌の状態、フケ、顔のほてり、胃腸の症状なども含めて判断しているのは、このためです。
瘀血や気鬱を改善すること、つまり体の中から健康にすることで、肩こりを解消しようというわけですね。
肩こりに適した漢方薬とは?
肩こりに処方する漢方薬は、肩こりによる痛みを取り除くことを第一目的として処方されます。
ですから、神経痛や慢性関節リウマチの治療で使われる漢方薬の処方例とよく似ています。
急性期の肩こりに対しては、桂枝二越婢一湯が、慢性化した肩こりには桂枝二越婢一加朮附湯や桂枝加附子湯などがよく効きます。
肩こりの症状に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
桂枝二越婢一湯(ケイシニエッピイチトウ)
桂枝二越婢一湯は、肩が痛む、関節が痛いと言った症状があり、体全体は火照っているけれども肩は冷え性である、喉が乾きやすく、汗っかきという方に適した漢方薬です。
特に、痛みが激しい場合や、日中よりも夜間にかけて痛みが増してくる場合によく効きます。
体力は中等度の人に用いられます。
桂枝二越婢一加朮附子湯(ケイシニエッピイチカジュツブトシウ)
桂枝二越婢一加朮附湯は、桂枝二越婢一湯に白朮(ビャクジュツ)と附子(ブシ)を加えたものです。
桂枝湯と越婢加朮湯を混ぜて作ることもできます。
白朮は、キク科のオケラの根茎から作られる生薬です。胃や腸の働きを整える健胃・整腸効果、利尿効果があります。
附子は、シナトリカブトから作られる生薬で、新陳代謝を高めるほか、鎮静効果や鎮痛効果、利尿効果があります。
桂枝二越婢一湯に白朮と附子を加えることで、体調を整え新陳代謝を活発化させることで、慢性化した肩こりを治していくのです。
桂枝加附子湯(ケイシカブシトウ)
桂枝加附子湯は、筋肉の痙攣、神経性の痛み、リウマチなどによく効く漢方薬です。
汗をよくかく、肩こりが強い、手足が引きつることが多いケースで処方されます。
そのほかには、頭痛や発熱、尿量の減少に対する効果もあります。
体力が低下を起こしている人に用いられます。
二朮湯(ニジュツトウ)
前述したいろいろな漢方薬があまり効かないような肩こりにも、優れた効果を示すのが二朮湯です。
体力は中等度の人に用いられ、幅広い肩こりの症状に対して処方されます。
特に四十肩や五十肩とよばれる病態に高い効果を示し、肩関節周囲炎の専門薬とよぶ人もいるほどの治癒率の高さを誇ります。
葛根湯(カッコントウ)
葛根湯は、風邪薬としてよく使われる漢方薬ですが、肩こりや関節の痛みにも効果があります。
特に首筋から背中にかけて張った感じのする肩こりに効きます。
頭痛を伴うような肩こりには、葛根湯が使われます。
そのほか
このほか、五積散(ゴセキサン)、薏苡仁湯(ヨクイニントウ)、麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)なども使われます。
肩こりの症状に応じた漢方薬
肩こりと一言で言っても、実はいろいろな症状がありますので、用いられる漢方薬もそれに応じたものが処方されます。
首から背中へのこり
この症状には、葛根が配合された漢方薬がよく使われます。
・葛根湯(カッコントウ)
第一選択薬です。
・桂枝加葛根湯(ケイシカカッコントウ)
葛根湯が合わない人は、こちらが用いられます。
首から肩にかけてのこり
この範囲に起こる肩こりには、柴胡(サイコ)や芍薬(シャクヤク)が配合された漢方薬が処方されます。
・柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
第一選択薬です。
・芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
こむら返りを起こしやすいなら、こちらがおすすめです。
胃腸の虚弱を伴う肩こり
胃腸が弱って、痩せたことで、筋肉量が低下した肩こりです。
・半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
みぞおち部分の違和感を伴うような肩こりに適しています。
瘀血(おけつ)に伴うこり
・加味逍遙散(カミショウヨウサン)
動悸や不安などの自律神経失調症や、更年期障害を伴うような肩こりに用いられます。
痛みの強い肩こり
痛みの強い肩こりに対しては、こりより痛みを緩和することを目的とした漢方薬が用いられます。
・桂枝二越婢一湯(ケイシニエッピイチトウ)
頭痛や寒気、夜に痛みが強まる肩こりには、桂枝二越婢一湯が用いられます。
・二朮湯(ニジュツトウ)
強い痛みには、二朮湯が処方されます。
・五積散(ゴセキサン)
貧血傾向や、顔面部のほてり、腰から足にかけての冷え性を伴うような肩こり、エアコンで冷やしすぎて発症した肩こりに適しています。
・薏苡仁湯(ヨクイニントウ)
関節が腫れたような症状を感じる肩こりに使われる漢方薬です。
・麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)
肌荒れやフケが出やすいなどの皮膚症状を伴う肩こりに処方されます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、肩こりの漢方薬治療について紹介してきました。
肩こりは男性・女性問わず発症する病気です。
肩こりを起こすと、首から肩にかけての重苦しい不快感、痛みなどによって、日常生活にも影響が生じます。
漢方薬は、体の中から健康にすることで、肩こりの解消を図っています。
もちろん、悪い姿勢や生活習慣を正すことはとても大切ですが、そうしてもなかなか治らない肩こりで悩んでいる方は、漢方薬を使ってみることをお勧めします。