不眠症や神経症などに温胆湯(ウンタントウ)
温胆湯(ウンタントウ)は、胃腸が弱い人の不眠症や神経症などを改善するための漢方薬です。
今回は、温胆湯の効能効果や副作用について紹介します。
不眠症について
不眠・不眠症とは?
睡眠の質や感じ方には、個人差があります。
少しの睡眠で良い人もいれば、10時間寝ても寝たりないと感じる方もいると思います。
時間帯や睡眠時間に関わらず、「眠れなくてつらい」と感じる症状は改善する必要あります。
- 床に入って眠ろうとするけど眠れない
- 夜中に何度も目が覚める
- 熟睡感がない
- 朝早く目が覚めて、そのあと眠れない
- 眠りが浅い
- 睡眠時間が短い
このような症状が、3週間以上続くことを一般的に不眠症といいます。
不眠症の治療
不眠症を治す方法として最初に行うことは、不眠が起こる基本的な原因を取り除くことです。
具体的には、
- 規則的な生活を試みて同じ時間に床にはいる習慣をつける
- ストレッチやぬるめの湯につかるといった入眠前の習慣を行う
- 気分をリラックスさせる
- カフェインを取らない
- 起床後すぐに太陽光にあたり、夕方以降は避ける
- 昼間は活発に動く
などです。
対策として検討のつくことをしても改善しない場合は、医師に相談してみましょう。
睡眠導入剤のほかに、不安が強く眠れない場合は抗不安剤を用いることもあります。
漢方医学の考え方
漢方医学の考え方には、「気・血・水(き、けつ、すい)」というものがあります。
「気」の流れが滞って眠れない場合は気の流れをスムーズにする処方を、イライラして眠れないという場合は感情の熱を冷ます処方をというように、不眠が生じている原因に合わせて漢方薬を選びます。
このように、一般的な睡眠薬と違い、漢方薬を飲んだからといって確実に眠ることができるというわけではありません。
不眠が生じている原因を解消することで、より自然に睡眠に導くように働きかけます。
ただ、漢方薬には西洋医学で使われる睡眠導入剤よりも副作用の程度が比較的軽いというメリットがあります。
しかし睡眠導入剤のように即効性はありません。
そのため、継続的に飲み続けることも大切となります。
温胆湯はどんな人にいいの?
温胆湯は、不眠や神経症がある人の中でも、いつも胃の調子の不調を訴えているような方に向いています。
漢方的考えでは、温胆湯は「胆胃不和、痰熱内擾」証を改善します。
「胆胃不和」は、胃の機能が悪化することにより吐き気、嘔吐、口の粘りなどの症状がみられることがあります。
「痰熱内擾」は、脳や自律神経が興奮しやすい状態です。
驚きやすい、疲れているのに気が高ぶっていて落ち着かない、不安、不眠、寝つきが悪いなどの症状が特徴です。
いらいら、動悸、めまいが生じることもあります。
温胆湯の主な適応症
- 自律神経失調症
- 不眠症
- 神経症
- 更年期障害
- 急性・慢性胃炎
温胆湯の配合生薬
温胆湯は、7つの生薬が配合されています。
半夏(ハンゲ)
サトイモ科カラスビシャクの塊茎を乾燥させたものです。
痰や咳を止めて、吐き気を抑える作用を有します。
竹茹(チクジョ)
イネ科マダケの皮をはいだものです。
肺の熱を冷まし、痰や咳を鎮める働きがあります。
枳実(キジツ)
ミカン科ダイダイの未熟果実を乾燥させたものです。
痰を鎮めて、イライラを抑える働きがあります。
陳皮(チンピ)
ミカン科ウンシュウミカンの果皮を乾燥させたものです。
消化を整える働きがあります。また、咳や痰を鎮める作用もあります。
茯苓(ブクリョウ)
サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたものです。
水分の循環をよくして、消化を整える作用があります。
甘草(カンゾウ)
マメ科カンゾウの根を乾燥させたものです。
消化吸収を整えます。また、止痛作用があります。
生姜(ショウキョウ)
ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたものです。
腹部をあたためて、発汗を促します。また、嘔気を抑える作用もあります。
内容が似ている漢方薬
温胆湯は、二陳湯(ニチントウ)という漢方薬に枳実と竹茹を加えたものです。
二陳湯には「燥湿化痰、和胃止嘔」の胃の不調を取り除く効果があり、そこに枳実と竹茹が持つ鎮静効果が加わることで不眠症や神経症に使われるようになっています。
二陳湯が基本であるため胃腸が弱い方も使うことができます。
ここで、名前に温胆湯が含まれている、2つの漢方薬を合わせてご紹介します。
竹茹温胆湯(チクジョウンタントウ)
温胆湯と同じく、不眠症や神経症にも用いられます。
ただし、イライラや怒りっぽいなどの熱の兆候がより強い際の使用に向いるとされています。
また、インフルエンザや肺炎などが治りかけても熱がなかなか下がらない、咳や痰が長引いている、気分がすぐれない場合にも使用されます。
配合生薬は13種類で、温胆湯に柴胡、黄連、香附子、桔梗、麦門冬、人参が加わります。
加味温胆湯(カミウンタントウ)
不眠症に使われることの多い漢方薬です。
温胆湯よりも血を補う働きも強いため、恐怖心や不安感が強かったり、うつ気味の方に向いています。
配合生薬は13種類で、温胆湯に酸棗仁、遠志、人参、地黄、玄参、大棗が加わります。
温胆湯の服用時の注意点
副作用
温胆湯で考えられる副作用について。
配合生薬の甘草の過剰摂取により、むくみが出たり、血圧が上がるなどの「偽アルドステロン症」の症状が出る可能性があります。
甘草が含まれているその他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際には、医師や薬剤師に相談して服用して下さい。
飲み方
通常、1日2~3回に分けて食前または食間の空腹時に服用します。
基本的に、お湯に溶かしてから服用すると、良い効果が期待できるとされています。
不眠症に効果的な食べものや飲みもの
漢方薬と同じように、口から摂取する食べ物も重要です。
次に不眠症の改善に役立つ食べ物や飲み物について紹介していきます。
食べもの
不眠症を解消したい場合、トリプトファンを豊富に含む食べ物を摂取するのが効果的と言われています。
トリプトファンとは、アミノ酸のひとつであり、睡眠に欠かせないセロトニンというホルモンが脳内に分泌するのを増やす働きがあります。
また、体内では作ることのできない成分です。
そのため、食物からトリプトファンを摂取することは重要です。
トリプトファンが多く含まれる食べ物は何があるでしょうか。
- チーズ
- バナナ
- 納豆
- 胡麻
- かつおぶし
- きなこ
- カシューナッツ
- ピーナッツ
などです。
特に、植物性たんぱく質に含まれているトリプトファンは、セロトニンを分泌するのに効果的と言われています。
納豆、ゴマ、カシューナッツ、ピーナッツなどを積極的に取り入れてみましょう。
飲みもの
■ハーブティー
ハーブの香りにはリラックス効果があり、気分が落ち着くと快適な睡眠をとりやすくなります。
特に、睡眠前に良いとされているのはカモミールティーです。
■ホットミルク
牛乳に含まれているカルシウムは、気分を落ち着かせてくれます。
またホットミルクを飲むことで、体が内側からあったまり、気持ちもリラックスできます。
電子レンジでチンするだけで簡単に作れるのもいいですね。
まとめ
不眠症や神経症に効果のある「温胆湯(ウンタントウ)」についてご紹介しました。
特に、胃腸が弱いタイプの方に効果的です。
不眠症の改善が期待できる漢方薬には、今回紹介したもの以外にもたくさん種類があります。
漢方薬での治療において大切なのは、現在の自分の身体の状態を知り、何が不足して滞っているかを知ることです。
体全体のバランスを整え、体調を整えていきましょう。