延年半夏湯(エンネンハンゲトウ)の効果と副作用
今回は延年半夏湯(エンネンハンゲトウ)の効果と副作用を中心にご紹介します。
延年半夏湯の効能・効果
延年半夏湯は、体力が中程度の方に使われる漢方薬です。
みぞおちに圧痛や抵抗感があり、足の冷えや肩こりがある場合の
- 慢性胃炎
- 食欲不振
- 胃痛
が適応症となっています。
また、適応症にはないですが、昔から慢性膵炎の人にも使用されている漢方薬です。
膵炎について
延年半夏湯がよく使われる症状として、慢性膵炎があります。
ここで、膵炎について少しご紹介しておきましょう。
膵炎は近年非常に増加している疾患のひとつです。
特に、急性膵炎は非常に怖い病気です。
胃の後ろに位置する膵臓ですが、食べたものを消化する膵液を産生して十二指腸へと送り、また血糖値をコントロールするためにインスリンを分泌する臓器です。
「膵炎」とは、膵液に含まれる消化酵素によって膵臓自体が消化されてしまうことにより、炎症が膵臓や他の臓器に起こる疾患です。
急性膵炎の最も多い原因はアルコールです。
急性膵炎は、急激な炎症が膵臓に起こり、みぞおちに強い痛みが生じます。
一方、慢性膵炎とは、膵臓の炎症が繰り返された結果、膵臓の正常な組織が壊されて線維化してしまい、硬くなっていく病気です。
膵臓の正常な細胞が減り続けると、働きが低下して膵液が分泌されなくなり、食物の消化吸収がうまくできなくなってしまいます。
最も多い原因は、こちらも急性と同じくアルコール性のもので、全体の70%を占めます。
次いで20%が原因不明の特発性です。
慢性膵炎の治療
一度だめになった膵臓の細胞は、残念ながらもとには戻りません。
そのため、それ以上病状が進行しないようにすることが治療においても大切です。
アルコールが原因の場合は、もちろん禁酒が大原則となります。
薬で膵液の分泌を抑えたり消化酵素を補うようにします。
また、脂肪の摂取を控えて、食べ過ぎないようにするなど、食事療法も重要です。
このように、膵臓の病気の多くは飲酒や偏った生活習慣から引き起こされることがほとんどです。
慢性膵炎の人が生活習慣で注意すべきポイント
慢性膵炎の治療では、早期の段階から膵炎の進行を抑えるために、「生活指導を行う」ことが非常に重要です。
禁酒はもちろん、たばこも慢性膵炎の発症と進行を促進するため、禁煙を行うことも重要です。
食事内容や食習慣への配慮も重要です。
油っこい食べ物は控えるようにし、栄養バランスを考えた食事を規則正しくきちんと取ることが大切です。
また、日常生活にいける飲酒、暴飲暴食、脂肪の摂りすぎは腹痛発作の原因となってしまいます。
発作を繰り返すと、膵実質の破壊と線維化を進行させてしまう恐れがありますので、食生活は非常に重要です。
慢性膵炎と漢方
慢性膵炎に対しての漢方薬の治療は、膵臓の外分泌機能(消化酵素を腸に分泌して食べ物を消化する働き)と、内分泌機能(インスリンなどのホルモン分泌による糖代謝)を補助する目的で使われます。
上記の膵臓の機能を補助するために、消化を助けて痛みを取り除くことを主目的とします。
医療用医薬品の漢方薬で慢性膵炎によく使用されるものとしては、「和保丸」、「枳実導滞丸」、「香砂六君子湯」、「柴芍六君子湯」、「半夏瀉心湯」などといったものが良く用いられます。
延年半夏湯に含まれる生薬
延年半夏湯に含まれる生薬は9種類です。
枳実、柴胡、檳榔子、土別甲は痰を取り除き、気を巡らします。
半夏は胃内の停痰を取り除き、桔梗は胸中の痰を取り除きます。
また、構成生薬のほとんどが理気化痰(気を正常に巡らせて機能の停滞を解消する、痰を取り除くこと)です。
胃内、胸内に停滞して水毒、ガスなどによって緊張や疼痛をおこしたものを消散させる働きをします。
半夏(ハンゲ)
サトイモ科カラスビシャクの球茎の外側を除いて乾燥させたものです。
身体を温め、停滞しているものを動かし発散します。去痰、鎮吐、鎮静効果があります。
柴胡(サイコ)
セリ科ミシマサイコの根を乾燥させたものです。
炎症を抑え、またストレスを緩和する働きがあります。
急性の解熱、解毒、鎮痛、鎮静に使われる代表的な生薬です。
土別甲(ドベッコウ)
スッポン科スッポンまたはシナスッポンの背甲を乾燥させたものです。
解熱作用があります。また、寝汗、痙攣、ひきつけなどに効果があります。
桔梗(キキョウ)
キキョウ科キキョウの根を乾燥させたものです。
鎮咳作用、去痰作用、排膿作用、抗潰瘍作用があります。また、末梢血管拡張作用があります。
檳榔子(ビンロウジ)
ヤシ科ビンロウジの種子を乾燥させたものです。
健胃、理気、駆虫の効果があります。吐き気、嘔吐、便秘、寄生虫の駆除用いられます。
人参(ニンジン)
ウコギ科チョウセンニンジンの根を乾燥させたものです。
新陳代謝を促し、胃の衰弱を改善します。また、健胃整腸作用、去痰、駆風などにも効果があります。
生姜(ショウキョウ)
ショウガ科ショウガの根茎です。
身体をあたため、新陳代謝機能を高めます。
発散、健胃、鎮吐・鎮嘔、食欲不振改善作用などがあります。
枳実(キジツ)
ミカン科ダイダイまたはナツミカンなどの未熟果実を乾燥させたものです。
理気作用、健胃作用、通弁作用、化痰作用などがあります。
呉茱萸(ゴシュユ)
ミカン科ゴシュユまたはホンゴシュユなどの果実を乾燥させたものです。
温裏、止痛作用があります。冷え、血行障害、腹痛、頭痛などに対して用いられます。
延年半夏湯の使用上の注意
飲み方
1日2~3回に分けて、食前または食間の空腹時に服用します。
相談すること
以下の方は、服用の前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
- ・医師の治療を受けているひと
- ・妊婦または妊娠している可能性のあるひと
- ・今まで薬でアレルギー症状(発疹、発赤、かゆみなど)が出たことがあるひと
副作用
延年半夏湯には、それほど強くあらわれる副作用はほとんどありません。
しかし、体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、副作用が出ることがあります。
まとめ
本日は、延年半夏湯(エンネンハンゲトウ)について紹介しました。
あまりなじみのない名前の漢方薬だったかもしれませんが、主に慢性胃炎に使われる漢方薬のひとつです。
足が冷える、背中が痛くてだるい、肩がこる、みぞおちがつかえていたいなどの症状改善に用いられます。
市販のものとしては、小太郎漢方製薬より、「延年半夏湯エキス細粒Gコタロー」の名前で一般用医薬品として発売されています。
また、古くから慢性膵炎の治療薬としても用いられていることで有名です。
治療に関しては、専門医の適切な指導を受けることが最も基本ですが、治療の一助として延年半夏湯を覚えておくと良いかもしれません。