動悸や不整脈に効果的!炙甘草湯(シャカンゾウトウ)の効能と副作用とは
漢方医学の考え方として、「気血水(キケツスイ)」というものがあります。
人を動かす生命エネルギーを「気」、体中に栄養を届ける血液を「血」、体を潤したり体温調節の役割を担う体液を「水」または「津液」として、この3要素こそが人体を構成し、体内を循環することで健康を保つという考え方です。
「気血水」の3要素のうちどれかが不足したり、巡りが滞るとバランスが崩れて体に不調があらわれます。
ここで紹介する「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」は貧血による顔色の悪さや、体力や免疫力が低下した状態とそれが原因の不整脈や動悸や息切れを改善します。
その生薬成分は体にどのように働きかけるのでしょうか?その効能と副作用、注意点を解説します。
炙甘草湯(シャカンゾウトウ)の効能と生薬成分とは?
体力の消耗などによって気・血・水が不足すると、不整脈や動悸、息切れを引き起こします。
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」は気・血・水を補い、これらの症状を改善する効果を持っています。
その生薬成分はどのように体に作用し、どのような効能を生むのでしょうか。
配合生薬
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」は9種類の生薬から構成されています。
気を補う生薬
「炙甘草(シャカンゾウ)※」「人参(ニンジン)」「大棗(タイソウ)」
血を補う生薬
「地黄(ジオウ)」「阿膠(アキョウ)」
水を補う生薬
「人参(ニンジン)」「麻子仁(マシニン)」「麦門冬(バクモンドウ)」
体を温めて気と血の巡りを良くする生薬
「桂皮(ケイヒ)」「生姜(ショウキョウ)」
※「炙甘草(シャカンゾウ)」とは、甘草を炙った後に乾燥させたものです。
気・血・水を補い期外収縮による不整脈や動悸、脈の異常を治す。
気が足りなくなると心臓の鼓動は弱くなり、血と水が足りなくなると血量が減って血の流れは弱くなります。
すると、期外収縮による不整脈や心悸亢進、動悸といった脈の乱れが起こってしまいます。
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」に含まれる生薬が気・血・水を補い、それぞれの働きを補強し合ってこの不調を改善します。
また気虚による疲れやすさ、だるさ、息切れ、胸の苦しさ、眠気などの症状、血虚による顔面蒼白、皮膚の乾燥、不眠、不安感、痩せ細りなどの症状、水虚による乾燥した喉、切れない痰、咳、ほてり、便秘などの症状も改善することが望めます。
自律神経を安定させる
古くから「大棗(タイソウ)」「生姜(ショウキョウ)」「甘草(カンゾウ)」という組み合わせは自律神経系を安定させて自然治癒力を高める効果があるとされてきました。
自律神経失調症や更年期障害への効果が期待できます。
またバセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症によるほてりや動悸、息切れなどの症状を改善します。
炙甘草湯(シャカンゾウトウ)の正しい服用方法と注意点
漢方薬の効果を望むなら、服用方法をしっかりと理解することが重要です。
間違えてしまうと、望んでいる効果がうまく得られなかったり、かえって体調不良を起こす原因となってしまうこともあるのです。
正しい服用方法
通常、成人は1日に9gの薬を2~3回に分割して服用します。
年齢や体重、そのときの症状の度合いにより服用量は増減します。
食前か食間の空腹時が効果的です。
ジュースなどは使わずに、水かお湯を使用しましょう。
ジュースや牛乳、お茶などは、その成分が薬に影響を与えて効果が得られなかったり、逆効果になることがあります。
服用できない人、注意が必要な人
体質や状況によっては、「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」の服用が適さない場合や、注意が必要な人もいます。
下記に当てはまる人は必ず医師や薬剤師に自身の状況を正確に伝え、指示を受けましょう。
妊婦や授乳中の人
妊娠中、授乳中の体への安全性は確立していないので服用は控えましょう。
薬アレルギーのある人、薬で体調を崩したことがある人
他の薬でアレルギー反応や体調不良を起こしたことがあるひとは注意しましょう。
同じ成分、または似た成分を含んでいるかもしれません。
持病がある人、他の症状を治療中の人、他の薬を使用中の人
現在治療中の症状や持病に何らかの悪影響を与える可能性があります。
また、他の薬と一緒に服用することで、特定の成分を過剰に摂取してしまうと副作用を引き起こすことがあります。
薬の飲み合わせについてはまだ不明な点も多く、成分同士の反応によっては考えもしない副作用があらわれることがあります。
炙甘草湯(シャカンゾウトウ)の副作用とは?
漢方薬は体に優しいイメージが強いですが、体質によっては副作用があらわれます。
以下のような症状が現れたらすぐに使用を中止し、医師や薬剤師などの専門家にそうだんしてください。
皮膚の異常
体が何らかの成分に拒否反応をしめすと、皮膚に異常となって現れることがあります。
蕁麻疹や発疹、発赤、かゆみなどの症状が現れたらすぐに服用を中断して医療機関で診察を受けましょう。
そのまま薬を飲み続けると症状の慢性化や悪化を引き起こします。
食欲不振や胃のむかつき、吐き気
副作用が胃腸にあらわれると、食欲不振や吐き気、胃がムカムカするなどの不快感がおこります。
吐き気を無理に抑えたりすると治りが悪くなるので、吐きたいときは無理をせず吐いてしまいましょう。
薬の服用をお湯から水に変えると治まることもありますが、ひどい場合は医療機関に相談しましょう。
偽アルドステロン症
全身の倦怠感、血圧上昇、全身がむくんで体重が増える、手足の痺れ・痛みなどの症状が起こった場合は「偽アルドステロン症」の可能性があります。
これは「甘草(カンゾウ)」の成分である「グリチルリチン」を過剰に摂取すると起こる副作用です。
悪化すると四肢のしびれや筋力の低下の症状をもつ「ミオパチー」を引き起こします。
むくみは自分で見てもわかりにくいことがあるので、気になるときは周囲の人に判断してもらいましょう。
他の薬との飲み合わせや長期服用による副作用
他の薬との同時併用や、長期間にわたっての服用を続けている場合は、成分の過剰摂取や成分同士の反応によって起こる副作用に注意が必要です。
特に「甘草(カンゾウ)」に含まれる「グリチルリチン」は市販の風邪薬にも含まれており、過剰摂取すると「偽アルドステロン症」を引き起こす要因となります。
炙甘草湯(シャカンゾウトウ)の購入方法は?
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」はツムラや小太郎漢方製薬などから発売されており、Amazonなどの通販ショップでも購入することができます。
はじめて服用する場合は漢方薬を扱う医療機関で診察を受けることをお勧めします。
特に脈にかかわる症状は、心筋梗塞など重大な疾患の引き金となることもあるので、症状と体質を相談し、自分にあった漢方薬を処方して貰いましょう。
保険が効くと市販品よりも安く購入できるという利点もあります。
まとめ
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」の効能や副作用についてご紹介しました。
不整脈や動悸などの脈の異常は放っておくと重大な病気を引き起こす可能性があるので、早めの対処が必要です。
「炙甘草湯(シャカンゾウトウ)」を利用することで症状を改善できるかもしれません。
まずは医療機関に相談してみましょう。